自分で作った歌なのに、なぜ自分でうまく歌えないのか?
「自分で作った曲なんだから、自分が一番うまく歌えるんじゃないですか?」
そう思う人もいるかもしれません。
確かに、自分で作った曲ならメロディーは知っています。
覚える必要もない。
歌詞だって、自分で書いたものなら意味も分かっている。
だから、すぐ歌えそうですよね。
でも実際にレコーディングしてみると、これが意外と難しいんです。
むしろ、
自分で作った歌だからこそ、うまく歌えない。
そんなこともあります。

頭の中には「理想の歌」がある
自分で曲を作る時って、頭の中にイメージがあります。
「ここはこんな感じで歌いたい」
「この言葉は、こんなふうに響いてほしい」
「このメロディーは、こういう表情で聞こえてほしい」
曲を作った時点では、その理想の音が頭の中で鳴っているんですよね。
ところが実際にマイクの前に立って歌ってみると、
「あれ?」
となる。
頭の中ではカッコよかったのに、歌ってみると何か違う。
この歌詞とこのメロディーはぴったりだと思っていたのに、実際に声にすると噛み合わない。
あるいは、
「この音、意外と取りにくいな」
ということもある。
作曲している時と、歌っている時では、見えている景色が違うんです。
一人の中に、3人いる
シンガーソングライターって面白い存在です。
作詞家がいて、
作曲家がいて、
歌手がいる。
本来なら別々の人が担当することを、一人でやっています。
だから簡単そうにも見える。
自分で書いた歌詞なんだから、意味は分かっている。
自分で作ったメロディーなんだから、音も知っている。
でも実際には、
「書いた自分」「作った自分」「歌う自分」
は、少しずつ違うんです。
作詞している時には分からなかったことが、歌って初めて分かる。
作曲している時には気づかなかったことが、自分の身体を通すことで見えてくる。
だから僕は、レコーディングしている時によく思います。
曲って、作った時点ではまだ完成していないんだな、と。
10回、20回歌って、ようやく分かることがある
オリジナル曲のレコーディングをしていると、一曲を何度も歌います。
10回。
20回。
もちろん全部を最初から最後まで歌うとは限りませんが、何度も声にしていく。
すると、途中で不思議な瞬間があるんです。
「あ、この曲って、こういう曲だったんだ」
って分かる瞬間。
作った本人なのに(笑)。
でも、本当にあるんです。
最初はメロディーとして知っていた。
歌詞としても知っていた。
ところが何度も歌うことで、その二つが自分の身体の中でつながっていく。
言葉がただの歌詞ではなくなって、自分の言葉になっていく。
メロディーも、ただの音程ではなくなっていく。
そこで初めて、
「この歌を歌う自分」
が出てくるんですよね。

曲を書くことと、歌を育てることは違う
だから僕は、
「曲ができたから完成」
とはあまり思っていません。
曲を作ることと、その曲を歌えるようになることは別の体験だからです。
譜面やデータの中には曲がある。
でも、その曲がその人の声を通って初めて、
その人の歌になる。
ここが面白い。
だから、これからオリジナル曲を作ってみたいと思っている人にも伝えたいんです。
最初から思い通りに歌えなくても大丈夫です。
それは「歌が下手だから」ではありません。
まだ、その曲と自分が出会っている途中なのかもしれない。
「こんな曲を書きたい」から始めなくてもいい
オリジナル曲というと、
「作曲ができないとダメ」
「音楽理論を知らないと無理」
「人に聴かせられるくらいうまく歌わなきゃ」
と思う人も多い。
でも僕は、もっと気楽でいいと思っています。
まず、
「こんなことを歌にしてみたい」
があればいい。
好きなこと。
大切な人。
昔の記憶。
今感じていること。
これからやってみたいこと。
そこから言葉が生まれて、メロディーが生まれる。
そして歌ってみる。
うまくいかなかったら、また歌ってみる。
曲だって変えていい。
歌詞だって変えていい。
最初に思っていたものと違う場所へ行ってもいいんです。
むしろ、そこが面白い。
作品は、歌いながら自分と出会っていく
僕が音楽を作っていて一番面白いと思うのは、
「完成品を作ること」だけではありません。
作っている途中で、
「あ、自分ってこんなことを思っていたんだ」
と気づいたりする。
歌っている途中で、
「この言葉、こんなに自分にとって大事だったんだ」
と気づくこともある。
だから、
自分の歌が、最初からうまく歌えなくても大丈夫。
作品は、歌いながら自分と出会っていくものなんです。
Diamond Music Tourの「4ヶ月集中 音楽ライフ・デビューツアー」でも、僕が大切にしているのはそこです。
上手な作品を作ることだけじゃない。
その人の中にある、まだ形になっていないものを見つけて、一緒に一曲にしていく。
一生に一曲くらい、
「これは自分の歌です」
と言える曲があってもいいと思うんですよね。
音楽の旅は、そこから始まります。








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