大統領就任式でのLady Gaga Performs
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大統領就任式でのLady Gaga Performs

更新日:2021年6月10日



2021年1月20日

アメリカ大統領就任式が開催され、Lady Gagaさんが国家斉唱されました。


今回ボーカルトレーナーの視点から、歌をどのように私たちが聞いているかをご紹介したいと思います。


 

『不納得な歌声』だったのでは?


まず今回のGagaさん、結論として「悔しい!失敗した!」と本人が感じた国歌斉唱だったのではないでしょうか。


私もいつものGagaさんとは、「ちょっと違うな」という印象でした。 低音の鳴り、響きの良さは健在で、さすがという感じですが、やはり非常に緊張していたのは当然だと思います。


今回、本領発揮できなかった要因を、いくつか私なりに書き出してみます。


・晴れの大舞台で失敗は許されないという緊張感

・雪もちらつくほどの寒さ

・時間は昼12時前後という、いつものライブよりかなり早い時間

・おそらく会場での事前リハはほぼなく、音響状況が読めない


と言った感じでしょうか。


そして「格式ある式典」ということで、歌い方がどこかいつもと違う『クラシックのように歌う』感じに見えました。


歌うたいは「ちゃんと歌おう」とすると、「いい声」を出そうとするので「クラシック的な発声」に謝ってしてしまうことがあります。

これは非常に危険です。

逆に声がこもってしまい、声が出なくなります。


ちゃんと歌うことより「いつも通り、のびのび歌う」というのが、こういう時こそ必要になり

ますね。



※歌い終わった表情もどこか悲しげ。。。



 

『常にアクセルとブレーキを同時に踏んでいる感じ』



素晴らしい晴れ舞台!思い切ってアクセルを踏み込んでのびのび歌いたい!

でもそうすると、声がぶれて音程も乱れてしまうので、ブレーキをかけざるをえない。


しかし、ブレーキもかけすぎると、晴れの舞台としてのスケールが小さくなってしまう。。。


そんな「葛藤」の中で歌っている、といった印象を受けました。 歌のレッスンで私はいつも「3つの勉強をしましょう」と話しています。


1:技術力

2:表現力

3:心の統制力


こういう大舞台では、結局「心の統制力」に、勝負がかかってきます。

いかにいつも通り歌うか。


「やろう!」とすると「できなくなる」

これが歌の不思議なところ。



百戦錬磨のGagaさんでも、「心の統制力」は難しいんだなと、改めて「心の統制力」の重要性を感じたステージでもありました。



もちろん、ご本人がどう思っていたかは、実際には私が知る由もありませんが。

あくまで私がこれまで30年、歌を見てきた経験で、推測でのお話ですので、お許しください。


 

『細かく聞いてみましょう』


それでは私なりにですが、このページのトップに置いた動画を見ながら、気づいたことを書いてみますね。

1:04

最初のブレスから次の発声で、呼吸のコントロールが乱れましたね。 そのために、次のフレーズの高い音が少し#しました。

呼気が少し強くなってしまったと思います。



1:23

上記の#をきっかけに、全体に慎重な歌い方に切り替えた印象があります。

しかしそれにより「発声お化け」的になり、声のアタリが後ろに奥まり出しました。

こうなると喉が閉まり「吸気が浅くなる」「高音が出にくくなる」という状態におち入りやすくなります。

さて、この後 大丈夫でしょうか・・・・



1:44

このあたり、非常に丁寧に慎重に歌っている印象ですね。

のびのび感がないので、なんだか聞いていて、こちらが緊張してしまいます。




1:48

ここの高音は、初回と違い丁寧で安定していますね。

少し余裕が出てきて、リラックスした綺麗な響きで歌えていると思います。


ここは、初めて体を動かす部分なので、少しいつものGagaさんらしく、伸びやかさが出ている印象です。



1:57

ここでのブレスは、失敗だったのでは無いでしょうか


「さあ、次が見せ場よ!」という気負いなのか、息は吸っていますが、呼吸の入っている場所が思った以上に浅い。

そうなると、次の声が出るか、聞いててドキドキします。



2:03

前のブレスで力んだので、ここのブレスは比較的丁寧にしてますね。

なので、続く下降フレーズも若干#しつつも、クリア。

ちょっと安心です。

ただ、ここの高音は、完全に守りに入っている感じとも言えました。

声の芯が抜けてしまい、力強さに欠ける印象で、勿体無い感じを受けました。



2:18

ここの「still」と「there」の間のブレスから、高音での裏声は、完全に失敗でした。

『our flag was still there』と後ろに手を振りかざし、並ぶ旗に振り向くパフォーマンスで「さあ、ここが山場だぞ」という気負いが裏目に出た印象です。

よく聞いてみると「Still」といった後に一度完全に、息を吐き捨ててしまったので、そこに続くブレスが完全に入りきらず「there」のロングトーンが不安定で、途中裏返りましたね。


これは流石に「やってしまった」感をご本人も感じているのではないでしょうか。



2:25

続く低音は歌やすいので、そのままの流れで自然に歌えてますが、逆に楽に歌える部分だからこそ、その前の「やってしまった〜」という焦りや悔しさの気持ちが、残ってしまいやすい部分でもあります。



2:28

その動揺からか、ここは完全に音程外しました。

声に力もなく、聞いてても「大丈夫か?!」とドキドキしましたね。



2:33

バッと振り向き「切り替えるわよ!!!」という潔さは、さすが長年ライブをしてきた貫禄!


しかし!

またブレスが雑になってます。 さあ、次のフレーズは大丈夫なのか!?

またまた聞いていて、ドキドキが続きます。



2:34

さあ、最後の見せ場!でしたが。。。ここも失敗しました。。。

残念。 「O'er the land」はフェイクから入る部分で、本来ならばGagaさんお得意なところだとは思うのですが、その前からの動揺が影響してか、フニャフニャした感が出てしまいました。


そしてよく聞くとこの「land」の最後(語尾)で、また息が抜けちゃったんですね。


そうなると、そのあとのブレス(吸気)が、かなり入りにくくなります。

次はまた高音がきますが、大丈夫なのでしょうか。


ドキドキが続きます。


2:39

ロングトーン崩れました〜。

声や表情からも「今日は声が出ない〜〜〜!!!!!」と言っているかのようです。


2:41

最後まとめのフレーズ。

最後は「私は絶対に負けないぞ!」と気迫の歌声。


しかし「of the」でかなり「リズム」突っ込みましたね。

本来ならば、ここはシンガーの余裕を見せる部分でもあるので、伴奏よりもリズムをためて、たっぷりリタルダンド(だんだんゆっくりする)をするところではないかな?


そういう意味でも、焦りが感じられてしまいました。



2:52

最後のロングトーンは、少し安定したのか、簡単なフェイクを入れて締め。

でも、思ったより切り上げが早い印象です。 あと3拍くらい伸ばして欲しかったなと思いました。

そこまでの余裕がなかったのかも知れません。




3:16

歌い終わった表情ですが、私には「悔しい!失敗した!」という風に見えたのですが、気のせいでしょうか。



 

『スーパーボウルハーフタイムショーでのパフォーマンス』

この動画は『ペプシゼロスーパーボウルハーフタイムショー』です。 この時の歌とパフォーマンスは、圧巻でした。 今回、もちろん舞台が違いますから、仕方がないのはわかっているのですが、本来のGagaさんの良さが、出し切れなかったのではないかと感じてしまいました。





 

『晴れ舞台での難しさ』


今回Gagaさんのステージを見て、思い出したものがあります。

2014年のオスカーでイディナ・メンゼルさんが大ヒットの"Let It Go" を歌ったステージ。





数々のステージを経験してきたはずのイディナ・メンゼルさんが、まさかのアクシデント。


私は今回のGagaさんと、同じ状況に落ちいったように感じました。


この時のイディナ・メンゼルさんの歌声は、公式の動画すら残ってないので、おそらく残しておけないと思ったのかも知れません。

やはりこれほどのスターでも、緊張との戦いをしているのだなと、しみじみ感じています。


技術力、表現力は常に練習できますが、 最後の最後はやはり「心の統制力」になるのだな、と痛感したステージでした。 皆さんは、どうお感じになりましたか?^^




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